「白い服に血の赤ね。」

ピアノを止めてローデリヒは今まで無視をしていた来室 者を見た。
室内だというのに剣を腰に差したまま。


人間でいえばまだ15にも満たないあの 小さな体でどうしてあの大きな剣が振れるのだろう。


「止めるなよ。」
「何の話ですか?」

「止めるなっつったのはピアノ。最初のはお前の旗だ よ。」

ああ、と小さく答える。
そして目の前の少年から目を逸らす。

赤(ロート)に線を引く白(ヴァイス)の旗。


ヴァイスは軍服で。

ロートは血。




戦場で剣を走らせて、白の軍服を血で真っ赤にして、
そしてその軍服を脱ぐその時に残った布 の白はベルトのラインだけ。



そんな騎士の有様の象徴がローデリヒの旗だった。

そしてそんな血生臭い旗をローデリヒはどこか好きにな れずにいた。

「かっけぇじゃん。」
「は?」
「戦うために生まれたんだろう、俺もお前も。」


顔をあげる。
こうしてこの少年の顔を見たのは始めての気がした。
鋭い目つきが自分を見ている。

逸らされる事無く― まっすぐ。


「前のお前は嫌いだったんだぜ。ポヤポヤしてて弱く て。」
「…私は、」

「誇れよ。この時代では強い事が何より の象徴だぜ。」
「−」
「まぁ俺は負けねぇけれどな!」


品のない風に少年は笑う。
気が済んだところでピタリと笑い声はとまったがそれでも高圧的な笑みは消えていない。


「いい面になっているよ。気に行ったぜ。」
「だから何の話なのですか。」


そう尋ねると少年はゆっくりと自分に向かってこう言うのだ。




「いつかお前を俺の占領地にしてやる。」



「……だから領地もない国かも怪しい男 が何の話をなさっているのですか。…第一私と貴方は一応同じ神聖ローマの家の者でしょう。」

「未来の話だよ。
考えるだけでワクワクするぜー!お前みたいな高慢ちきを服従させて俺のものにして?
そしたら毎日そのピアノでも俺のために演奏してもらおうか。」



「…ピアノがお好きですか?」

「お前のはな。」

ローデリヒに会話の流れを読まない質問をした自覚はあったが少年はそれを気にせずに普通に答えた。
なぜこの少年がこんなにも楽しそうなのかローデリヒにはわからない。



少年はまた目を細めて高く笑う。血よりも鮮やかなロー トの瞳。



「俺に目をつけられたんだ。それだけの価値があると思 われたんだよ。お前は。光栄に思え。」

「どんな俺様ですか。」



「 ギルベルト・バトルシュミット様だよ。」


「……名前は知ってます。」

本当に一応、知っていた。…
呼んだ事はなかったけれ ども。



「そうか。じゃあ一生覚えてろ。」

「………」



この戦う誇り高い魂のことを。
そのためにこの地上に落とされたのだということを。

そして少年も自分もそうである事を。






自分の存在意義を。



「忘れるな。」



誰との間でも平穏は何百年と生きる自分達には永遠でなくいつか、戦う日は来るだろう。





そしていつかの聖戦でお互いの名を呼び合うのだ。

戦い生きる国として。

血に濡れても穢れも知らぬ
そのために生まれた者として。


それを美しいロートの瞳に忘れるな、と言われた。


だから。


…だから。








いつか何十、何百、何万年先でもローデリヒはこの旗を 掲げよう。

その爛々とした貴方の赤い瞳を逸らす事はなく、剣を握っていたいのだ。










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